産後に多汗症になる?知っておきたい産褥期多汗(さんじょくきたかん)と対処法

妊娠・出産にともない、女性の体にはさまざまな変化が生じます。なかには「急に汗かきになった」「流れる汗が止まらない」など、多汗の症状に悩む方も少なくありません。

出産後に大量の汗をかくようになるのは、“産褥期多汗(さんじょくきたかん)”と呼ばれる症状です。だれにでも起こりうる症状ですが、産後の大きなストレスになる場合もあります。

そこで今回は、あまりよく知られていない産褥期多汗に焦点を絞りました。原因や症状、治療の必要性を判断する時期、そして、子育て中でも受けやすい多汗症治療について解説します。出産後の体調変化に不安を感じている方はぜひ参考にしてください。

【産後の多汗症】産褥期多汗(さんじょくきたかん)とは

まずは、産褥期多汗が起きる原因を知っておきましょう。汗をかきやすくなる理由やいつまで続く症状なのかがわかれば、不安を感じることが少なくなります。

産褥期多汗は、産後のホルモンバランスの変化で起こる

産褥期(さんじょくき)とは、出産後に体が妊娠前の状態に戻るまでの期間のことです。期間は一般的に6~8週間とされますが、ホルモンバランスが出産前の状態とほぼ同じ状態になるのは卒乳後まで待たなければなりません。

産褥期多汗は、出産後のホルモンバランスの変化にともないあらわれる症状です。ただ、多汗の症状は産褥期のみにとどまらず、ホルモンバランスが整う時期まで続くこともあります。

もっとも、産褥期多汗で生じる汗のほとんどは、エクリン汗腺から分泌されるサラサラしたものです。そのため、ふき取ってしまえば、臭いはそれほど気になりません。しかし、慣れない子育てに翻弄され、セルフケアもままならない時期にあらわれる症状なので、人知れず悩んでいる方も多いようです。

産後に多汗症が発生しやすい理由

出産直後の産褥期は、女性ホルモンの量が急激に減少する時期でもあります。一時的ですが更年期に近い状態となるため、発汗機能や体温などがうまくコントロールできなくなり、結果として汗の量が増えやすくなるのです。

また、相対的に男性ホルモンが優位な状態になることも、発汗量増加の原因の一つと考えられています。発汗は男性ホルモンで活発になり、女性ホルモンで抑制されるため、産褥期は通常より汗をかきやすい状態になっているのです。

なお、産褥期のホルモンバランスの変化は、産後のイライラや不眠、肌荒れや抜け毛など、多汗以外の症状にも影響をおよぼします。

産後の多汗症は一時的なもの

産褥期多汗は病気ではなく、産後の一時的な体調変化の一つです。卒乳をむかえてホルモンバランスが整う頃には、少しずつ気にならなくなってきます。

では、具体的に出産後どれくらい経つと、ホルモンバランスが整ってくるのでしょうか。

母乳保育を行なわない場合、出産から3ヵ月ほど経つとホルモンの状態が妊娠前と同じ状態に落ち着いてくるケースが多いようです。母乳保育を行なっている場合は、卒乳から1~3ヵ月でホルモンバランスが整ってきます。[作成者7] 

もっとも、ホルモンの状態は目で見て確認できるものではありません。そのため、月経の再開を目安にするのがよいでしょう。月経が再開して周期が安定してくれば、ホルモンの状態が妊娠前とほぼ同じ状態に落ち着いたと考えられます。

産後の多汗症の治療は、卒乳後がおすすめ

出産後の多汗症がつらく、治療を考えている方もいらっしゃることでしょう。しかし、出産直後や授乳期に多汗症の治療をするのはおすすめできません。産褥期多汗は一般的な多汗症とは異なり、治療の必要性を判断すべき時期と、治療に適した時期があります。

産後の多汗症は、治療不要な場合がほとんど

産褥期多汗は、ホルモンバランスの変化にともなう一時的な体調変化です。そのため、ホルモンバランスが整っていない出産直後や授乳期に治療をすべきかどうか判断するのは適切ではありません。

実際、産褥期多汗は卒乳後に落ち着くことが多く、治療が必要でない場合がほとんどです。したがって、治療を受けるかどうかはホルモンの状態が安定する卒乳後に判断すべきでしょう。

治療が必要でも卒乳前は避けるべき

妊娠前から多汗症に悩んでいる場合でも、妊娠中・授乳中の治療は避けるべきです。医療機関でも、妊娠中や授乳中の多汗症治療はほとんど行なわれません。

なぜなら、多汗症治療の多くは妊娠中や授乳中の方を対象としたものではなく、安全性が確立されていないからです。麻酔など薬剤を使うケースでは、赤ちゃんへの影響も懸念されます。また、母乳保育をしている場合、治療内容によっては断乳が必要です。

このような理由から、出産後に多汗症の治療を希望する場合は卒乳を待たなければなりません。そして、卒乳後に治療を受ける場合であっても、体への負担が少なく生活上の制限が生じにくい治療を選ぶ必要があります。

子育て中でも受けやすい!産後の多汗症治療3選 

卒乳後に多汗症治療を希望する場合、どのような治療を選ぶべきなのでしょうか。ここからは、体への負担が少なく子育て中でも受けやすい治療を3つ紹介します。

ボツリヌストキシン注射

シワ取りに効果があることが知られるボツリヌストキシン注射は、多汗症の治療にも効果的です。

ボツリヌストキシンを汗の気になる部分に注射すると、汗腺周辺の筋組織の働きがおさえられ、発汗が強く抑制されます。薬液を注射するだけなので、手のひらや足の裏、額、頭皮など、わき以外の多汗症に悩む方にもおすすめです。

治療時間は、両わきに注射しても10分ほどで終了します。ダウンタイムはなく、当日の力仕事やシャワー浴も可能です。

効果があらわれ始めるのは注射から2~3日後で、半年前後汗止め効果が続きます。効果は一時的ですが、「とりあえず、今すぐにでも汗を止めたい」という方に適した治療です。

ビューホット

ビューホットは、高周波を利用した医療用マシンです。ビューホットによる治療では、わきの下の皮膚に無数の極細針を差し込み、針の先から高周波を照射して汗腺組織を焼灼(しょうしゃく)、破壊します。多汗症の原因であるエクリン汗腺だけではなく、ワキガの原因であるアポクリン汗腺も破壊するため、多汗症とワキガの同時治療も可能です。

治療時間は、両わきで約20分かかります。ダウンタイムはほとんどなく、治療当日から通常の生活が可能です。にもかかわらず、効果は手術をした場合とほとんど変わらず、傷が残ることもありません。しかも、一度破壊された汗腺は再生しないため、長期的な効果が期待できます。

ミラドライ

ミラドライは、電磁波(マイクロ波)を利用したワキガ・多汗症の治療マシンです。水分に強く反応する電磁波の性質を活かし、ほかの部分より多くの水分を含む汗腺組織をピンポイントで熱処理・破壊します。ミラドライも、ビューホットと同じように多汗症とワキガの同時治療が可能です。

治療時間は、両わきで20分程度ですみます。ダウンタイムがほとんどなく、治療した日からもとの生活に戻れるのはビューホットと同様です。傷も残らず、汗腺が破壊されるため、長期的な効果が期待できます。

産後に多汗症の症状が続く場合は、当院にご相談ください

出産後に多汗症の症状があらわれる産褥期多汗は、多くの場合、一時的なものです。卒乳後、月経が再開する頃になれば少しずつ気にならなくなりますが、汗の量が減らない場合はお気軽に当クリニックへご相談ください。

当クリニックでは、今回ご紹介した方法以外にも子育て中の方が受けやすい治療をいくつかご用意しています。子育て中だからといって、ご自身のケアを躊躇する必要はありません。汗がストレスになれば、メンタル面にも悪影響がおよびます。お子さまのためにも、多汗症の症状が続く場合は治療を検討しましょう。



記事の監修者:長澤 誠一郎

1984年慶應義塾大学医学部卒業。
医学博士。
日本美容外科学会認定専門医。
多くの治療実績を積みながら、
大手美容外科での院長経験を経て、2010年に銀座長澤クリニックを開院。
現在は日本美容外科医師会の理事を務める。
銀座長澤クリニックのすべての治療を担当している。

銀座長澤クリニックは、あなたのお悩みに向き合い、どのようなことでも親身にお応えします。
お問い合わせは無料ですのでお気軽にご相談ください。

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