売掛金を早期に現金化する手法として知られる「ファクタリング」。
ファクタリングは、資金繰りを迅速に改善する手段として多くの企業で利用されていますが、
その効果は単なる資金調達にとどまりません。
資産のスリム化が可能になるため、オフバランスの実現によりバランスシートを最適化でき、
企業の価値を高める手法としても注目されています。
今回は、ファクタリングによって実現できるオフバランスについて詳しく解説し、
企業の財務体質を改善するためのメリットと留意点を紹介します。
また、ファクタリングがオフバランスの手法として適している理由にも触れていますので、ぜひご覧ください。
オフバランスを実現するファクタリングのメリットと注意点
オフバランスの意義、得られる利点と生じるリスク、活用手法について詳しく解説します。
オフバランスの意義とその役割
オフバランスとは「オフバランスシート」の略称で、企業が保有する資産や負債をバランスシートから外し、
会計上での計上を行わない状態を指します。
たとえば、事務所や設備といった不動産を所有している場合、これを第三者に売却して賃貸契約に変更することで、
バランスシートから資産項目として除外することが可能です。
バランスシートとは、企業の財務内容を示す重要な書類であり、
所有する資産や資金の調達源を明示するものです。
このシートから資産を除くことにより、企業の財務状況をスリム化し、資金繰りを効率化する効果が期待できます。
オフバランスによる利点
オフバランス化により企業は次のような利点を得られます。
1. 企業価値の向上
オフバランス化によってバランスシートの規模が縮小されると、
総資産利益率(ROA)が上昇します。
ROAとは、企業が保有する総資産を活用してどれだけの利益を生み出せるかを測る指標であり、
資産規模が減少し利益が維持されればROAは自然と高まります。
このため、オフバランス化は企業価値を引き上げる有効な手段となり得ます。
さらに、自己資本比率が向上することにより、
倒産リスクの低い安定した企業として評価されるため、企業価値を一層強固なものにできます。
2. 収益性の向上
オフバランス化によりバランスシートが軽くなれば、財務状況の改善が期待できます。
これにより、投資家からの信頼性が向上し、将来的な取引機会も増加する可能性が生まれます。
こうしたプラスの効果が収益性の強化につながります。
3. 資金調達の容易化
オフバランス化による財務の安定化は、投資家や金融機関からの信頼度向上にも寄与します。
その結果、資金調達がしやすくなり、新たな事業機会の創出にもつながります。
例えば、保有している不動産を売却することで得た現金は、返済義務がないため、
負債の圧縮にも貢献します。
オフバランス化のリスク
オフバランス化には、次のようなリスクも存在します。
資産を現金化できる機会が減少
オフバランス化とは、資産を現金化する行為であるため、将来的に資金調達の柔軟性が低下する可能性があります。
例えば、所有資産が減少している場合、追加の資金調達が難しくなるケースも考えられます。
オフバランス化の際は、資金ニーズを長期的に検討することが求められます。
粉飾決算のリスクに注意
オフバランス化は、財務を改善するための有効な手法ですが、
実際の財務状況を偽装し、粉飾決算とみなされる恐れもあります。
エンロンやライブドア事件のように、オフバランス化を悪用した不正事例が存在します。
これを防ぐため、会計基準を遵守し、法令に基づいて慎重に実施することが不可欠です。
オフバランス化の手段
オフバランス化を実現するための手段には以下の3つがあります。
- 不動産の売却
- リースバック
- ファクタリング
不動産の売却
不動産の売却は、オフバランス化の一般的な手法の一つです。
企業が所有している不動産を売却することで、バランスシートから資産を外し、
その資金を用いて財務状況の改善を図ることができます。
資金繰りが厳しい状況下では、この方法は特に効果的です。
リースバック
リースバックとは、不動産や設備などを一度売却し、
その後同じ物件や設備をリース契約で利用する手法です。
これにより、売却による資金調達と、同じ拠点での事業継続を両立させることが可能です。
ただし、売却後のリース料金がコストとして発生するため、
資金繰りに注意して計画的に進めることが重要です。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛金をファクタリング会社に売却することで、
売掛金の支払い期日を待たずに資金を得られるサービスです。
売掛金は通常バランスシート上の資産として計上されますが、
ファクタリングを利用することで、資産としての売掛金を除外し、
オフバランス化を実現することができます。
ファクタリングは、資金繰りの改善に有効な手段であり、
事業資金の流動性を向上させる点で、企業にとって有利な手法となります。
ファクタリングはオフバランスの有効な手段
オフバランスを実現する手段として、ファクタリングは非常に有効です。
銀行融資と異なり、借入金として記載されないため、
ROA(総資産利益率)が向上する効果が見込めます。
以下の企業例を用いて、ファクタリングと融資による資金調達の比較を行います。
- 預金 1,000万円を保有している企業
- 売掛先からの入金待ちの売掛金 500万円を保持している
融資で資金調達した場合
銀行から500万円の融資を受けた場合のバランスシートは以下の通りです。
借方 | 金額 |
---|---|
預金 | 1,500万円 |
売掛金 | 500万円 |
資産合計 | 2,000万円 |
貸方 | 金額 |
---|---|
借入金 | 1,000万円 |
純資産 | 1,000万円(利益500万円含む) |
負債・純資産合計 | 2,000万円 |
この場合、総資産は2,000万円で、ROAは次の通りです。
利益500万円 ÷ 総資産2,000万円 × 100 = 25.0%
ファクタリングで資金調達した場合
次に、ファクタリングで500万円を調達した場合のバランスシートを見てみましょう。
借方 | 金額 |
---|---|
預金 | 1,450万円 |
資産合計 | 1,450万円 |
貸方 | 金額 |
---|---|
借入金 | 500万円 |
資本金 | 950万円(利益450万円含む) |
負債・純資産合計 | 1,450万円 |
ファクタリング手数料(50万円)を引いた450万円が利益となり、借入金の増加がないため、
総資産は1,450万円で、ROAは以下のように計算されます。
利益450万円 ÷ 総資産1,450万円 × 100 = 31.03%
銀行融資とファクタリングで同額の500万円を調達した場合でも、
ファクタリングの方がROAが高くなり、企業価値向上につながります。
こうした理由から、オフバランス化を検討する際にはファクタリングの活用が推奨されます。
まとめ
オフバランス化によるバランスシートのスリム化は、ROAや自己資本比率を向上させ、企業価値の増加に寄与します。
結果的に、収益性が向上し、資金調達の可能性も広がるため、財務体質を安定させる手段として有効です。
ただし、オフバランス化には注意が必要です。
適切に計上すべき資産や負債を故意に除外した場合、粉飾決算とみなされるリスクがあります。
これは犯罪行為にあたるため、法令を順守し、正確かつ慎重に取り組むことが重要です。