融資とは異なる?ファクタリングの独自審査のポイント解説

売掛金という自社資産を譲渡し、資金を確保する手段がファクタリングです。
この方法は資産売却による取引であるため負債にはならず、また、ファクタリング会社や契約時期によっては最短で即日資金を受け取ることができることから、資金調達の選択肢として注目されています。

資金繰りの選択肢には、ファクタリング以外にもさまざまな方法があり、特に金融機関からの融資は主要な選択肢として考えられます。
融資では、厳格な審査をクリアする必要がありますが、ファクタリングにおいてはどのような審査が行われるのでしょうか?

今回は、ファクタリングの申し込み後に行われる独自審査について、融資との違いを比較しながら詳しく解説します。

融資とファクタリングの資金調達の仕組みの違い

ファクタリングは融資とは異なる審査を経る必要があります。まずは、それぞれの資金調達の仕組みを理解しておきましょう。

融資による資金調達の概要

融資とは、銀行などの金融機関が企業へ資金を提供し、後日返済を受ける形式の金融契約です。
事業を円滑に進めるための資金を自己資金や収益だけで賄うのが難しい場合に、企業は融資を利用します。

融資を受けた企業は、基本的に金利を加えた分割払いで返済を行います。
資金を活用して事業を成長させ、売上を増加させることができれば、企業は返済額以上の収益を得て事業を拡大できます。

ローンは一般的には個人の大きな買い物、例えば住宅や自動車の購入に用いられると認識されていますが、企業が活用するビジネスローンも一種の融資です。

融資とは異なる資金調達方法に「出資」があります。
出資は投資家や企業から資金提供を受け、返済義務はないものの、出資者は見返りとして利益の一部や経営参加の権利を得ることが一般的です。

ファクタリングによる資金調達の概要

ファクタリングは、企業が掛取引で発生した売掛金をファクタリング会社に売却し、資金を得る方法です。
審査は必要ですが、融資に比べて短期間で完了し、即日入金も可能です。

掛取引では商品やサービスの納入後、すぐに代金が支払われるわけではなく、一般的に月末にまとめて請求される形式です。
そのため、納入から実際の入金まで時間差が生じますが、この時点で企業は売上を受け取る権利として売掛債権を保有します。

ファクタリングでは、この売掛金を譲渡し、支払期日よりも前に資金化することでキャッシュフローを改善します。
手数料は発生するものの、早期の資金化により事業拡大や運転資金の確保に役立ちます。
2者間ファクタリングでは、売掛先からの入金後、ファクタリング会社にその額を支払うことで完了します。
3者間ファクタリングでは売掛先にも取引を了承してもらい、直接ファクタリング会社に支払いが行われます。

ファクタリングと融資における審査内容の違い

ファクタリングでは独自の審査を行い、それに合格すれば迅速な資金調達が可能です。ここでは、融資とファクタリングの審査内容の相違点を説明します。

審査で重視される信用力の違い

ファクタリングと融資の審査の大きな違いは、信用力を評価する対象です。
融資の場合、「資金を借りる企業」の信用力が重視されます。
企業の経営状況、財務データ、既存の借り入れ、返済履歴などが調査され、貸付金の返済能力があるかどうかを審査します。

一方、ファクタリングでは「売掛先企業」の信用力が重視されます。
利用企業がどれだけ厳しい状況にあっても、売掛先が支払いを行えない場合にはファクタリング会社にリスクが発生するため、売掛先の信頼性が重要です。

利用企業の財務状況・決算の重要性

ファクタリングと融資の審査では、いずれも利用企業の財務状況や決算の確認が行われます。
融資では特に返済能力を重視し、企業の財務データや決算内容が精査され、不十分と判断されると審査に通りません。

一方、ファクタリングでは、売掛先企業の財務状況の方が優先されます。
それでも、利用企業の財務状況が全く考慮されないわけではありません。
例えば、売掛先からの入金があった際、ファクタリング会社へ迅速に支払いができるかは重要です。
資金繰りが非常に悪化している場合には、審査に落ちることも考えられます。

信用情報の照会の有無

信用情報の照会は、CICやJICCなどの信用情報機関から信用履歴を取得して確認することを指します。
融資では、この信用情報の確認は必須です。
一方で、ファクタリングでは信用情報の照会は基本的に行われません。
ファクタリングは資金調達のスピードも求められるため、提出書類をもとに迅速な判断が行われます。

消費者金融からの借り入れの有無

融資審査では、消費者金融からの借り入れがあるかもチェックされます。
その事実だけで審査結果が決定するわけではありませんが、借り入れがあると審査が厳しくなる可能性が高いです。

一方で、ファクタリングの審査では、消費者金融からの借り入れが審査対象に含まれないことが多いです。
利用企業の財務状況がどうであれ、売掛先企業の信用が重視され、基本的にこの点は影響を受けません。

審査にかかる期間の違い

融資の審査期間はその内容によって異なりますが、利用企業の状況や申込内容、金融機関の繁忙期かどうかによっても変動します。
保証付き融資の場合、審査は1週間から1か月で完了することが多いです。
保証のないプロパー融資では、1か月から2か月程度かかることもあります。

これに対して、ファクタリングの審査は非常に短期間で終わることが多いです。
ファクタリング会社によっては、30分程度で審査が完了し、最短で即日入金が可能です。
2者間ファクタリングの場合は最長でも2日程度、3者間ファクタリングの場合でも1週間以内で完了するケースが一般的です。

必要書類の違い

申し込み時に必要な書類の種類と数も、融資とファクタリングで異なります。
融資では、2期分の決算書や試算表、資金繰り表、事業計画書、納税証明書、商業登記簿謄本、取引銀行一覧など、多くの書類が求められます。

ファクタリングの場合、請求書、確定申告書、決算書、本人確認書類、銀行通帳、商業登記簿謄本などが必要ですが、ファクタリング会社によってはより少ない書類で申し込める場合もあります。

ファクタリングの独自審査の特徴

上記の比較を基に、ファクタリング特有の審査の特徴をまとめます。

売掛先の信用が重視される

先述のとおり、融資とは異なり、ファクタリングでは売掛先企業の信用力が審査の中心となります。
また、融資は長期間の返済を前提としていますが、ファクタリングでは短期間(1~2か月)で売掛金の入金が見込まれます。
そのため、売掛先の信用は融資ほど厳格ではないこともあります。

オンライン審査やAI審査の普及

ファクタリングでは、オンラインで申し込みから入金までが完結するサービスが増えてきています。
即日入金を可能にしているファクタリング会社の多くは、オンライン完結型のシステムに対応しています。
面談なしで迅速な資金調達ができるという利点がありますが、その分、担当者との直接対話ができず、幅広い相談が難しいことがあります。
また、AIを活用した審査を導入するファクタリング会社もあり、24時間審査が行えるというメリットがある一方、人による柔軟な対応は期待できません。

3者間ファクタリングは2者間よりも審査に通りやすい

ファクタリングは2者間と3者間の取引形式があります。
2者間取引では利用企業とファクタリング会社のみが関与しますが、3者間取引では売掛先企業も関与します。
売掛先企業が同意し参加することで、ファクタリング会社は直接信用を確認できるため、審査通過がしやすくなり、手数料も低めに設定されることがあります。

ファクタリングの審査に通らない場合

ファクタリングの独自審査に落ちるケースとして、次のようなものがあります。

不良債権の売掛金

支払期日を過ぎた売掛金は不良債権とされ、通常のファクタリング会社では買い取りができません。
このような債権は、弁護士や債権回収会社(サービサー)での取り扱いとなります。

売掛先が個人事業主の場合

売掛先が個人事業主である場合、ファクタリング審査に通りにくくなる傾向があります。
個人事業主は企業と比べて支払い能力の確認が難しいためです。

利用企業が個人事業主の場合

個人事業主としてファクタリングを利用する場合も、審査に通りにくくなることがあります。
債権譲渡登記が法人しか設定できないためです。
ただし、一部のファクタリング会社は個人事業主向けのサービスを提供していることがあります。

売掛先の財務状況が悪い場合

売掛先企業の財務状況が悪く、倒産の可能性がある場合、審査に通るのは難しくなります。
ファクタリング会社は売掛金が回収できないリスクを負うため、そのリスクが高いと判断された場合には審査が厳しくなります。

利用企業の信頼性に問題がある場合

ファクタリングは売掛先企業の信用を重視しますが、利用企業が過度に信頼を欠く場合、例えば犯罪行為の疑いがある、経営者が不誠実、提出書類が虚偽であるといった場合、審査には通りません。

3者間ファクタリングで売掛先の同意がない場合

3者間ファクタリングでは売掛先企業の同意が必要です。
売掛先が譲渡に同意しない場合、取引は成立しません。
2020年の民法改正により、債権譲渡禁止特約があっても譲渡が可能になりましたが、この規定は主に2者間ファクタリングに適用されます。

売掛金の支払期日が遠い場合

ファクタリング会社は、売掛金の回収ができるかどうかを重視します。
支払期日が遠い場合は、未回収リスクが高まると判断されるため、審査が難しくなる可能性があります。

二重債権が疑われる場合

二重債権とは、同じ請求書を複数のファクタリング会社に提出し、重複して資金を調達しようとする行為です。
これは詐欺に該当し、審査に通らないのは当然です。

ファクタリング審査を通過するためのポイント

ファクタリングの独自審査に通るために重要なポイントを挙げます。

審査条件と基準を事前に確認する

ファクタリングは即日入金が可能であるなどのスピーディーさが特徴ですが、焦って申し込む前に、利用条件や審査基準をしっかり確認することが重要です。
ファクタリング会社によって、利用条件は異なります。
個人事業主が利用できない場合や、最低取引金額が設定されている場合もあるためです。

売掛金の規模や希望資金調達スピードで会社を選ぶ

ファクタリング会社は取り扱う売掛金の額が異なるため、自社の売掛金額が条件に合致する会社を選ぶことが大切です。
希望に合う会社を選ぶことで、審査に通りやすくなる可能性があります。

譲渡する売掛金の選定

複数の売掛金がある場合、どの売掛金を譲渡するかも慎重に検討する必要があります。
支払期日が短く、信用度の高い売掛金の方が審査通過の可能性が高まります。

まとめ

融資との違いを比較しながら、ファクタリングの独自審査について詳しく紹介しました。
ファクタリングは、最短で即日入金も可能な資金調達手段です。
融資に比べ審査基準は厳しくないものの、売掛先の信用力が重視されるため、比較的通りやすいといえます。
ファクタリング会社の中には90%以上の審査通過率を謳うところもあります。
しかし、利用条件や審査基準の確認を怠ると、予想外の審査落ちが発生し、結果として資金化の遅れやキャッシュフローの悪化を引き起こすこともあります。
そのため、しっかりと準備し、審査に臨むことが大切です。

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